分かってない その2-2

1/1

595人が本棚に入れています
本棚に追加
/255ページ

分かってない その2-2

 その日、私は林間学校だったのだ。泊りがけの学校行事。八人部屋でお布団を敷いて、非日常にわくわくしながら友達と過ごしていたところに入った連絡は、何の現実味もなかった。  久しぶりに二人きりで過ごせる日だったその日、両親は外食に出たらしい。  その帰りに、多重事故に巻き込まれて命を落とした。  辛かったとか悲しかったとか、そういうのはひとまず置いておこう。  現実を認識するのと、認識したあとの受け入れ難さは私を長い間苦しめたけど、でも今はもう大分落ち着ている。忘れられる訳はないけれど、気持ちが揺らぐ頻度は少なくなった。  だって、心を落ち着けるに十分な環境を与えてもらえたから。  両親をいっぺんに亡くし、ほんの十歳の身では身の振り方も決められる訳もなく呆然としていたら、式が終わるより早く私を引き取ると名乗りを上げたのがパパだった。  顔を合わせたことはあったし、だからもちろんその存在は認知してたけど、正直当時引き取ってもらえるほどの関係が私とパパにはなかった。なのに何故かパパは名乗りを上げて、そして反対する周りの声を頑として聞き入れなかった。  筆頭候補に挙がったのは父方の祖父母だったけど、実家は遠く、また祖父は既に足を悪くしていて、祖母はその介護だけでいっぱいいっぱいな状況だった。お父さんの方には未婚の弟が一人いたけど、当時は海外勤務でそもそも日本に住んでいない状況。  母方の親戚を当てになんかできないのは分かっていた。だってそもそも私はそっちと全く血の繋がりがない。なのに面倒を見てくれなんてずうずうしい考えだということは、幼心にも分かっていた。  施設に入れられるのかもしれない、とぼんやりと思っていたのだ。  なのに、パパは。  まだ二十六だった。  仕事とか結婚とか子どもとか。何もかもがこれからというところだった。  いきなり子どもの面倒なんか見られる訳がない。子育ての経験だって当然ないのに。
/255ページ

最初のコメントを投稿しよう!

595人が本棚に入れています
本棚に追加