第一話「超能力嫁の日常」

1/2

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ

第一話「超能力嫁の日常」

俺の嫁子は超能力者だ。結婚するまで知らなかった。今思い返せば不可思議な事だらけだったが、嫁子の「私、ドジだから(テヘッ)」で流されていた気がする。 家事は週替わりで当番制にしているのだが嫁子は何でも念力でやってしまう。 「最近下っ腹が出て来ちゃっててさ」と深夜のネットショップで買ったプルプルベルトを巻いて寝そべりながら、白目になって身体ごとプルプル震え出した時は驚いた。 「嫁子!! 大丈夫か!?」と仕事鞄を放り投げて駆け寄ると、嫁子はいたって普通に、 「あー、大丈夫よー」と白目でプルプル震えながら言った。 どこが大丈夫なんだと思った矢先、真後ろで朝食後の皿やコップが宙を舞い、勝手に食器洗浄機に収まっていった。 「念力?」 俺が尋ねると嫁子は、 「そうよー。ごめんね何かびっくりしたよねー。念力使う時こうなるからー」 と白目で身体をプルプル震わせながら言っていた。その様子はまるで陸に打ち上がった新鮮なカジキのように威勢の良い動きだった。 「そ、そうなんだ。じゃあ、仕事行ってくるよ」 俺が玄関へ向くとゴミ袋が宙を舞い、玄関を飛び出してマンションの下にあるゴミ出しエリアへ落ちて行った。下で大家さんの悲鳴がした。 「あ、旦那ちょっと待って」と嫁子が俺を呼び止めた。 「帰りに刺身買って来て」と嫁子はカジキのようにピチピチと波打ちながら言っていた。 「……わかった。刺身だね」
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加