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第二話「仕事の愚痴は持ち帰らない」
今日は仕事先で上手く行かなかった。
どんな職場にも嫌味な同僚や先輩、上司はいる。
でも今日は特に酷かった。
家に帰って夕飯の支度をしつつ、思わず嫁子に愚痴を吐いてしまった。
「今日さー、会社の先輩の当たりが強くて。ホントしんどかったよ」
「えー? 旦那、会社で虐められてんの?」と嫁子はソファーで寝転びながら海外ドラマを観ていた。着ている服がネズミ色の寝巻きな所、今日は1日寝て過ごしていたようだ。
「まぁ、いびりだな。キツイいびりをね、毎日食らってんのよ」
「かわいそうー。会社の先輩最低だね」
「最低さ」
「旦那、マインド大丈夫?」
嫁子は起き上がってキッチンにいる俺に声を掛けてくれた。こうゆう時はとても優しい。
「心が痛い。今日は心が軋んでる」
「それは大変だ。まじないを掛けてあげるよ」
「心が回復するおまじない?」
俺が振り向くと嫁子は俺の胸に手を当てて、声に力を入れて念を飛ばした。
「痛いの痛いのーー……」
まるで築地で聞くセリをしているかのような声だった。
「職場のお局の小指に飛んでけぇえ!!!」
何で小指? と思った矢先、時空の歪みを感じた。
「地震か?」
俺は海外ドラマのチャンネルをニュースチャンネルに変えてみたが今日も俺たちの世界は平和だった。
「これで明日は気持ちよく帰って来れるさ」
嫁子は良いことをした、といった顔付きでリモコンを取り、また海外ドラマを観始めた。
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