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パチンコ店
最近見つけたスーパーマーケットは狭くて古いのですが、その寂れっぷりが気に入ってしまい週三回は利用しています。
細い道を挟んだ向かいにはパチンコ店があり、時間帯によっては駐輪場から溢れ出た自転車と店外で喫煙するお客さんとでごった返しています。
隙間をくぐり抜け、カニさんのように横歩きしなければスーパーマーケットの入り口までたどり着けない混沌ぶり……。
ともかく、そんな状況でも野菜の新鮮さに惹かれて、その日も買い物に立ち寄りました。
乱雑に停めてある自転車たちを見てギョッとしました。
一台の自転車の荷台部分に、おじいさんが体育座りしている……。
荷台に腰掛けているならともかく、膝を両手で抱えているのです。
頭髪はなく、目がやたらとギョロギョロしています。グレーのスウェット上下を着ているようですが、ズボン丈が寸足らずなのか、細い脛から足首が目立っていました。
きっとパチンコ店から休憩しに外へ出てきた客なのだろう、
それにしても自転車ごと倒れたりしないのかな……と思いつつ、あまりじろじろ見ないようにしてスーパーの中に入りました。
買い物を終え、店の外へ出て驚きました。
おじいさん、今度は道端に座っている……。
自転車同士の間に挟まるようにしてしゃがみこんでいるのです。
そこへガタイの良いお兄さんが自転車を容赦なく足で押しやりつつ、スマホを手に通話しながらスーパーマーケットの入り口へと近付いてきました。
「……うん、スーパー◯◯屋でメシ買って帰るところ。二時間しか寝てねえし。
明日も朝早いからさー、とっとと帰って寝ないと辛いわ」
なにしろ大声なので“二時間しか寝てねえし”をやたら繰り返しているのが聞こえてきました。
するとおじいさんは顔をあげ、そのお兄さんの背中めがけてぴょんと飛び付いたのです。
なんとなく某漫画の『戸◯呂兄弟』を思い出しながら見守っていると、
お兄さんはおじいさんをおんぶしたままクルリと振り返り、反対側のパチンコ店へと入っていきました。
二時間しか寝てないのでは?!と思いましたが、急に気が変わってしまったのでしょうか。
もしかするとおじいさん、ギャンブルの妖精的な存在だったのかもしれません。
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