雨のコンビニ

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雨のコンビニ

ある夜、ウォーキングに出掛けたのですが途中で雨が降りだしてしまいました。 とりあえず近くのコンビニに駆け込み、雨宿りさせてもらいました。 小降りになったら走って帰ろうと思ったのですが、それどころか本降りになってしまい止む気配がありません。 仕方無いな、ビニール傘を買うか……でも勿体無いし……とケチくさく考えていた時でした。 店内に“ピンポ~ン”と入店音のメロディが鳴り響きました。 品出しをしていた店員さんも「いらっしゃいませー」と声を挙げています。 が、誰も入って来ません。 出入り口に目をやりましたが、ガラス扉は閉じたままです。 きっと何かがセンサーに反応してしまったのだろうと思いつつ、私は雑誌コーナーを覗いてみることにしました。 するとまた入店音が鳴り始めました。 どこのコンビニも同じような造りかと思いますが、雑誌コーナーは出入口のすぐ横にあったんです。 そのため『私の影がセンサーに反応してしまったのだ』と思いました。 入り口から離れたところに行かねば、と奥へ移動していると、またも入店音が鳴りました。 ニ度も入店音を鳴らしてしまって悪いなあ……と 思いつつ外を見ると、ちょうど小雨になってきました。 これなら帰れそうです。 タダで雨宿りさせてもらうのも何だし、せめてミネラルウォーターでも買おうと思い、私は飲料棚へ向かいました。 そして会計をしているとまたも『ピンポ~ン』と鳴り始めました。 ああ、またかと思いました。 しかし今までと違っていたのは、繰り返し鳴り続けていることと、入り口のガラス扉がゆっくりと開いたことでした。 店員のお兄さんも、会計の手を止めて見つめていました。いや、固まっていたのでしょうか。 入り口の向こうには、やはり誰もいません。 そのまま扉は90度近く開くと、またゆっくりと閉まっていきました。   「……風、強いんスかね?」お兄さんが一人言のように呟きました。 私も咄嗟に「そうですね、外は結構吹いてましたよ」と答えました。  実際のところは風など吹いていなかったのですが、お兄さんを怖がらせまいと、そう言ってしまいました。 それに扉は、内側から外側へ向かって開いたのです。 つまり外から風が吹き付けたのではなく、店の中からゆっくりと外へ出ていくように……。 “何か”も、あのコンビニで雨宿りをしていたのでしょうか?
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