作家活動、はじめました

「この密室は絶対に誰にも破れまい」

　作家志望の大学生である私は、先ほど考案したばかりの密室トリックが書かれた原稿用紙を、下宿先のボロアパートの自室で悦に入りながら眺めていた。

「うぬ、我ながら素晴らしい出来栄えだ。この作品はどんなミステリマニアにでも絶対に看破されることはないだろう。安易にネットに公開して、アイディアを誰かに盗用されるのは嫌だ。プロの推理作家になって行き詰った時の隠し玉として、大切に保管しておこう」

　◇

　将来は作家と呼ばれるクリエイターになる。それが私の子供の頃からの夢だった。