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「あれ、おかしいわねえ……」
どんなに力を込めても原稿用紙はびくともしない。編集長はおもわず首を傾げた。
「無駄ですよ編集長。ここに書かれた密室は絶対に破れません。なぜならその作品は」
「その作品は?」
私はどんと胸を叩いて答えた。
「プロの推理作家になって行き詰った時の隠し玉として温存していたんです。今日から私は、我が理系の知識の粋を集めたこの渾身の大作『絶対に破れない原稿用紙』を引っさげて、発明家に転身します」
「……ようするにナントカ家なら、なんでもよかったのね」
<了>
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