20人が本棚に入れています
本棚に追加
日曜の一件以来、Aは沙織から徐々に距離を取っていった。
はっきりと面と向かって「別れよう」と言ってくれればまだあきらめられたかもしれないが、婚外恋愛に免疫のない、優柔不断な男のとったフェイドアウトという方法は、沙織の気持ちをいたずらにたかぶらせる一方だった。
そうなると、自負していた彼女の余裕とやらは跡形もなくなり、連夜のメールの送信、会う約束を取りつけるまでAの職場付近をうろつくなど、どんどん醜い行動がエスカレートしていった。
婚外恋愛は、麻薬と同じ。
沙織は、Aのことを愛していたんじゃない。そしてAも。
二人とも、秘密の関係をキメていることにラリッていただけ。
このままいけばいずれAの妻にばれ、彼女を深く傷つけ、賠償を求められる可能性など、このときの沙織の頭にはまったく入っていなかった。
浅はか、そして愚かというほかない。
ストーキング寸前のところでようやく目が覚めた沙織は、自らAとの関係を終わらせた。そして、彼氏とも別れた。
最初のコメントを投稿しよう!