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「昔々、森の奥に魔女たちが住んでいました。
彼女たちは時折森から出てきては、恐ろしい毒草を摘み、害獣を従え、ブツブツと呪文を唱え、また森へと入っていきます。人々は魔女を恐れ、一体彼女たちがどういうつもりでそんなことを繰り返しているのか、自分たちにどのような呪いをかけているのか、いつも怯えて暮らしていました。
そんな中、魔女に直接話を聞いてみようという者が現れました。アズール、ロート、ジョーヌ、ベルデという四人の若者たちです。彼らは争うことを避け、魔女のリーダーと交渉することに決めました。
『聡明で偉大なる魔女よ。かねてよりの貴女の行いに、人々は恐れ慄くばかり。毒草を摘み、害獣を従え、呪文を唱え……。一体、貴女方は何をしようというのです』
『ああ、人の子よ。恐れさせたのなら詫びを言おう。我らは毒草からそなたらの命を守り、害獣からそなたらの畑を守り、疫病が流行らぬよう呪文を唱えておったのだ』
四人の若者は、帰ってそのことを人々に伝えました。人々は喜び、安堵し、また根拠のない思い込みを抱いていた自分たちを酷く悔やみました。
その後、人々は魔女が来るたびに感謝の意を述べ、食事を振る舞い、礼儀の限りを尽くしました。
感動した魔女のリーダーは、魔女の〈力〉と、人間がそれを使うために必要な〈道具〉とを、四人の若者たちにそれぞれ分け与えました。
アズールには〈水を操る力〉と〈杖〉を。
ロートには〈火を操る力〉と〈剣〉を。
ジョーヌには〈風を操る力〉と〈弓〉を。
ベルデは〈大地を操る力〉と〈槍〉を。
彼らは四つの大国を創り、魔女と人間が平和に暮らせるよう世を治めました。
そうして、それは子孫にも受け継がれ、今でも魔女と人間は仲良く暮らしているのです。
……おしまい」
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