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帰路
「私たち、もう26だよ。早いなぁ~」
帰り道。時刻は20時を少し回ったあたり。携帯片手にライトをつけながら並んで歩いていた。
田舎故に街灯がほとんどなく、頻繁に鹿も出没する。一本道で迷うことはないが、車で移動しなければ自宅まで1時間はかかるのだ。その道を歩いて帰ろうと無理矢理引っ張り出した冬乃の行動に今更驚くことはない。昔からこういうやつなのだ。
「10代が懐かしいよぉ〜」
冬乃がこのど田舎に引っ越してきたのは小学2年生の時。複式学級で1年生3人、2年生4人の前で堂々と挨拶していた姿を今でも覚えている。幼稚園の頃からずっと一緒だった俺たち4人の輪に、元々いたかのようにすぐ馴染み、1年生にも上級生にもたちまち人気の存在となっていた。
冬乃は何もないこの田舎を誰よりも楽しんでいたように思えた。夏には毎日のように川で遊んだり、山に入って虫捕りを日が暮れるまでしたりしていた。それが高校生になっても続いた。
毎日のように俺の家に押しかけ「川に行くよ!」とか「今日はカブトムシが私を呼んでいる」とか抜かしながら無理矢理引っ張り出す。そのくせ俺を置いてとっとと走っていってしまう。一度も振り替えることなく行ってしまうのだ。
「後4年で30だよ? 嫌だな~三十路」
冬乃は缶ビールを煽りながら嘆いた。
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