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最後
ごぽごぽと湯気に引っ張られるように沸き立ち、耐えきれなくなった水は弾けるようにして散っていく。
そこにほろほろと麺をまぶすように入れる。八の字を描くようにかき混ぜてから、30秒。テゴを高く上げ、お湯を垂らす。
初めに2、3回軽く落とすように振り湯を切り、腕を伸ばし切った瞬間に力を入れる。
パァンッ! と、テゴの隙間から水が飛び出す。
太い箸を入れ、半分程度掴んだまま丼の中に入れる。水分を失った麺はスープを飲むように絡んでいく。何回か高く上げ湯気を飛ばし、塩味に浸った麺が香りにも包まれながら丼に収まる。蓋をするかのようにメンマ多め、玉子2つ、チャーシュー1枚を乗せ、海苔を端に添えて完成だ。
「ほらよ」
冬乃の前にドンっと置いた。傾いていた湯気が腰を据えたように一直線に伸び、いい匂いを漂わせていた。
「いただきまーす」と言いながら箸を入れ麺を掴んでいる。救い上げられた麺はシャワーをあびた後のようにスープを滑らせ、湯気に隠れることなく、そのまっすぐな姿があらわとなった。
ずずっと一気に吸い上げていた。食べるときちょっと右側に逸れる顔の角度や麺とトッピングを同時に箸ですくって口に入れる食べ方も、夢中で食べている姿も、次に見れるのはいつになるのか。
冬乃は転勤することになり、明日このど田舎からいなくなるのだ。
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