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対角線が垂直に交わる四角形はひし形である――これは吉本がついさっき解説した「ひし形は対角線が垂直に交わる」という命題と非常に似ていた。
――文言が似ているのだからこの問題の答えも「正しい」なのではないか?
そんなことを漠然と伊藤が考えていたとき、吉本が再び口を開いた。
「もし正しいと答える場合は証明、つまり、きちんと理由まで説明できないとダメだよ」
吉本の言葉を受けて、教室中からシャープペンを走らせる音が聞こえ始めた。伊藤も垂直に交わる2本の直線を描き、四角形を作ってみる。なんとなくひし形になりそうな気はするのだが、それ以上の説明はできそうにない。伊藤のノートには垂直な線のペアが1組、2組と描かれていき、証明が全くできないまま時間が過ぎていった。
「はいここまで。ではみんなに訊こう。正しいと思った人」
問いかけに対し、クラスの中の半分以上の手が上がる。
「では、証明ができた人は?」
吉本のさらなる問いかけが出た瞬間、全員の手が下ろされた。
「なるほど。ではこれだとまだ正しいとはいえないね。では、正しくないと思った人は?」
そう吉本が問いかけた瞬間、1人の手が上がった。関口の右手だった。
「関口さん。正しくないと思った理由、説明できる?」
「はい」
「じゃあ前に出てきて説明して」
吉本に促され、関口はチョークを握った。
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