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コロンとアイスコーヒーのグラスの中から音が聞こえたのは
その時だった。
あっ、氷の舟が、グラスの中で漂流している。
このまま時間が経過していけば
だんだんとけてなくなるのか……。
ねぇ、美咲。
いっそこのまま僕たちも一緒にこの舟に乗船しないか?
このとけかかった氷の舟に。
そうすれば、ずっとこのまま、一緒にいれ……______。
「こらっヒロ!また、グラス覗いて何考えてるの?
そうやって一人で、まーた遠い世界に行っちゃう所が、
女の子にとっては心配になるのよ。」
違うんだ。
違うよ。
自然にとけていくこの氷のように、
何事もなかったかのように終わることもできるはず。
僕が美咲に今までずっと思ってたこと。
言えなかったこと……。
「ねぇ、ヒロ?ところで、これあの時の氷だったりして……?」
美咲はグラスの中の氷を指さす。
二人で覗いたグラスの中。
あの日の思い出がよみがえる。
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