二.グラスの中

2/2
前へ
/7ページ
次へ
コロンとアイスコーヒーのグラスの中から音が聞こえたのは その時だった。 あっ、氷の舟が、グラスの中で漂流している。 このまま時間が経過していけば だんだんとけてなくなるのか……。 ねぇ、美咲。 いっそこのまま僕たちも一緒にこの舟に乗船しないか? このとけかかった氷の舟に。 そうすれば、ずっとこのまま、一緒にいれ……______。 「こらっヒロ!また、グラス覗いて何考えてるの? そうやって一人で、まーた遠い世界に行っちゃう所が、 女の子にとっては心配になるのよ。」 違うんだ。 違うよ。 自然にとけていくこの氷のように、 何事もなかったかのように終わることもできるはず。 僕が美咲に今までずっと思ってたこと。 言えなかったこと……。 「ねぇ、ヒロ?ところで、これあの時の氷だったりして……?」 美咲はグラスの中の氷を指さす。 二人で覗いたグラスの中。 あの日の思い出がよみがえる。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加