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竜との出会い
「ねえ、君!」
親の畑仕事を手伝っていた少年――テオは手を止めて、女性の声がしたほうに振り向いた。全身を鎧に包み、腰に剣を差した何人かの男女の集団が畑の側に立っている。
「この辺りにドラゴンが出るっていう話、聞いたことないかな?」
女剣士は優しい口調でテオに問いかける。
「さあ、知りませんね……」
テオは首をかしげた。
「そう、じゃあいいの。それじゃあね」
男女の集団は鎧の金属音を響かせながら、その場を立ち去っていく。
「あれが××か?」
去りながら、鎧の男がテオを指差した。彼が何を言っているのかテオはいまいち聞き取ることができなかった。
彼らが去ると、テオはほっとして大きく息を吐いた。
彼らは身なりからして冒険者だろう。冒険者というのはあちこちを移動しながら、様々なクエストをこなして、報酬を得ている者たちのことだ。
ここ数日、村には多くの冒険者が訪れ、村人にドラゴンについての質問を投げかけていた。ドラゴンを討伐するためだろう。
村人はドラゴンについては何も知らなかったが、実のところテオはドラゴンのことを知っていた。テオがそのドラゴンと出会ったのは三年前のことになる。
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