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ノアに提案されるがままに、テオはノアの背中によじ登る。ゴツゴツとして冷たい鱗をしっかりと掴んだ。
背中に乗るテオをノアはチラッと確認した。
「テオ、準備はいいか?」
「いつでもいいよ」
ノアは大きな翼をはためかせて、ゆっくりと浮き上がっていく。
木々が目線より下に流れていき、下ではシアが手を振っていた。テオは手を振り返しながら、徐々に遠くなっていくシアを見つめた。
ノアは上昇気流を掴んだのか、翼を広げているだけで徐々に高度を上げていく。
遥か眼下には雄大な森林が広がり、その森の中にひっそりとテオが住んでいた村が佇んでいた。山の向こうにはさらに他の山が連なり、その先の地平線の向こうでは夕日が今にも沈もうとしている。
この美しい光景が全てデータでできているなんて、テオには信じられなかった。そして、この光景を美しいと感じる心すらもデータでできているのだろう。
それでも、テオがこの光景に感動していることだけは確かだった。
「ノア」
テオはノアの背中から名を呼んだ。
テオの声は風の音にかき消されずに、ノアの耳に届いたようだ。
「なんだ?」
「ずっと、こうしてノアと飛んでいたいよ」
背中からではノアの表情はあまり見えないが、ノアが少し笑ったような気がした。
「ああ、私もだ」
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