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山は危ないから入るなと親に言われていたが、その日テオはこっそり山に探検へ出かけた。
やや高緯度に位置しているこの地域にも短い夏がやってきて、鬱蒼とした木々が山の斜面を立ち並んでいる。斜面を縫うように進み、テオは山の頂上を目指した。
道中、テオは茂みからガサガサと葉が擦れる音を聞いた。
「誰かいるの!?」
テオの声が静かな森の中に響く。返事は無く、遠くで鳥の鳴き声が聞こえてくるばかりだ。
テオは好奇心から茂みの中へと入っていく。
茂みを抜けると、そこにはテオの背丈の倍近い大きさのある青いドラゴンがうずくまっていた。
ドラゴンはテオに向かって咆哮した。
テオは恐怖のあまりに動けなくなってしまったが、ドラゴンは一度咆哮したのみで、テオを襲うことはなかった。
思いの外おとなしいドラゴンを不思議に思って、テオはドラゴンを眺めた。
空色の艷やかな鱗が全身を覆い、獰猛さを思わせる鋭利な牙が口元に並んでいる。それでいて、目は不思議と知性を感じる光を帯びていた。
テオがふとドラゴンの翼に目をやると、ドラゴンは翼の根本から出血していた。
「怪我してるの!?」
テオはカバンから念の為に持ってきていた薬草を取り出す。
「大人しくしててね……」
テオはゆっくりとドラゴンに近づいた。
ドラゴンはテオに小さく唸ったが、それきりでテオのことを観察するように見つめる。
テオはドラゴンによじ登り、翼の根本で薬草を使った。すると、翼の傷はみるみるうちに癒えていく。
「これでよし。治ったよ」
テオはドラゴンの背中から飛び降りた。
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