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ドラゴンは翼を数回はためかせて、テオのほうを見た。
「ありがとう。人の子よ」
ドラゴンのくぐもった声にテオは驚いた。
「喋れるの!?」
「人の言葉はわかる。私はノア。君は?」
「僕はテオ……」
「テオか。良い名だ。礼と言ってはなんだが、これを君にやろう。ドラゴンの鱗は高く売れると聞く」
ノアと名乗ったドラゴンは自らの鱗を一枚剥がし、テオに差し出した。
受け取った鱗をテオは太陽に透かしてみる。太陽が鱗を通して青色に光っていて、まるで宝石みたいだ。
「ありがとう。でも、これは売らないよ。大事にする」
テオの言葉を聞いたノアは少し笑ったように見えた。
一人と一匹はしばらく語り合った。
テオは村から出たことがなく、外の世界の話をノアから教えてもらった。ノアは人間の暮らしを知りたがり、テオは村での生活のことを話した。
楽しい時間はあっという間に経ち、日が少し傾き始めた。そろそろ帰らなくてはいけない時間だ。ノアとの別れにテオは寂しさを覚えていた。
テオはノアを見つめた。
「ねえ、またここに来ていい?」
「ああ、いつでも来るといい。私は夏の間はこの辺りにいるつもりだ」
ノアは優しく笑った。
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