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衝撃を感じたときには、既にテオの左腕は地面へと落ちていた。
テオは痛みで絶叫する。脚がもつれて、そのまま地面に倒れ込んでしまった。
男はそんなテオを見て、
「へえ、いいねえ。そういう反応が見たかったんだよな」
と残酷な笑みを見せる。
男の仲間が男に近付いて、
「被虐趣味もその辺にして、早くドラゴンを倒しにいこうぜ」
と男を急かした。
冒険者一行はテオを置いて、あっさりと山の奥へと進んでいってしまった。
テオはそんな冒険者たちを見て、恐怖した。
いともあっさりと人の腕を切断しておいて、それを被虐趣味で片付け、テオのことを放ってドラゴンを討伐しに山へと入っていく。冒険者にとって命とはそんなに軽いものなのだろうか。
片腕を失ったテオはなんとか立ち上がろうとしたが、脚がフラついて立つことができなかった。
頭がぼんやりとして、意識が薄れていく。身体に力が入らず、テオは地面に突っ伏した。
「ノア……逃げて……」
ひんやりと冷たい地面の上で、テオは小さく呟く。
その声は誰にも届くことはなかった。
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