通りすがりの魔道士

1/3

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ

通りすがりの魔道士

 目が覚めると、テオの頭の下には柔らかくて温かな何かがあった。自分が膝枕をされていると理解すると、テオは跳び起きた。 「目が覚めたみたいだね」  テオが後ろを振り返ると、まだ成人していなさそうなローブを着た若い女性が座っていた。  テオは状況がわからず、なんとか声を絞り出す。 「あなたは?」 「私はシア。通りすがりの魔道士……かな? 腕の調子はどう?」  シアと名乗る魔道士に言われて、テオは気がついた。テオの切断された左腕が、何事もなかったかのようにテオの肩とくっついていた。 「あれ!? どうして? さっき切られたのに」 「治癒魔法で治しといたよ」 「すごい……! ありがとうございます! なんてお礼を言っていいか」 「いいよ、別に。でも、こんなところで腕を切られて倒れてるなんて何があったの?」  テオは冒険者がテオの腕を切り落として笑ったことを、シアに伝えた。  シアは悲しそうな顔でテオの話を聞いていた。 「ひどい……。いくら君がAIだからってひどすぎるよ」 「え?」  AI。  テオはその言葉を聞いたことがあった。それは冒険者たちがテオに向けて、言っていた単語だった。 『あれがAIか?』 『お前はAIか? ふーん、細かい仕草が普通の奴とは違うな』 『AIは死ぬときはどんな反応をするんだ?』  さっきまではAIという単語がなぜか認識できなかったのに、なぜか今ははっきりとわかる。彼らは確かにAIと言っていた。  AIとは人工知能のことだ。だが、人工知能なんていうものを、テオは自分がなぜ知っているのかがわからない。  それに、シアが言った通りだとすると、テオは人工知能だということになってしまう。  混乱しながらもテオはシアに尋ねる。 「あの、僕ってAIなんですか?」
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加