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通りすがりの魔道士
目が覚めると、テオの頭の下には柔らかくて温かな何かがあった。自分が膝枕をされていると理解すると、テオは跳び起きた。
「目が覚めたみたいだね」
テオが後ろを振り返ると、まだ成人していなさそうなローブを着た若い女性が座っていた。
テオは状況がわからず、なんとか声を絞り出す。
「あなたは?」
「私はシア。通りすがりの魔道士……かな? 腕の調子はどう?」
シアと名乗る魔道士に言われて、テオは気がついた。テオの切断された左腕が、何事もなかったかのようにテオの肩とくっついていた。
「あれ!? どうして? さっき切られたのに」
「治癒魔法で治しといたよ」
「すごい……! ありがとうございます! なんてお礼を言っていいか」
「いいよ、別に。でも、こんなところで腕を切られて倒れてるなんて何があったの?」
テオは冒険者がテオの腕を切り落として笑ったことを、シアに伝えた。
シアは悲しそうな顔でテオの話を聞いていた。
「ひどい……。いくら君がAIだからってひどすぎるよ」
「え?」
AI。
テオはその言葉を聞いたことがあった。それは冒険者たちがテオに向けて、言っていた単語だった。
『あれがAIか?』
『お前はAIか? ふーん、細かい仕草が普通の奴とは違うな』
『AIは死ぬときはどんな反応をするんだ?』
さっきまではAIという単語がなぜか認識できなかったのに、なぜか今ははっきりとわかる。彼らは確かにAIと言っていた。
AIとは人工知能のことだ。だが、人工知能なんていうものを、テオは自分がなぜ知っているのかがわからない。
それに、シアが言った通りだとすると、テオは人工知能だということになってしまう。
混乱しながらもテオはシアに尋ねる。
「あの、僕ってAIなんですか?」
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