通りすがりの魔道士

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 シアは怪訝な顔でテオを見る。 「あ、あれ? おかしいな。AIは自分がAIだと理解できないようになってるってイベント要項に書いてあったのに」  シアは何かを考えながら髪をいじって、言葉を続ける。 「うん。まあ、そう。君はAIなの。ここはゲームの世界でね」  シアはテオが知らなかったこの世界のことを語り始めた。  この世界はゲームの中の世界で、シアを始め冒険者は現実世界のプレイヤーだという。  このゲームの世界では、数日前からドラゴン討伐イベントが開催されていて、この近くにドラゴンが出るという情報が運営から出ているらしい。  今回のイベントの肝は、なんといっても試験的に村人一人ひとりにAIを搭載して、リアルな世界を構築することにあるという。そのAIを搭載した村人の一人がテオだというのだ。 「ここはゲームの世界で……僕がAI……?」  テオは愕然として呟く。 「うん。でも、AIは自分がAIだと理解できないようになっているはずなのに。君が理解できるなんて、おかしいな」  シアは首をかしげる。 「確かにシアさんと会うまでは、AIという単語を聞いても、頭の中にノイズが走ってその単語を聞き取ることすらできませんでした。でも、なぜか今は理解できています」 「私に会ってからってことは……もしかして、この杖に原因があるのかな」  シアは持っていた杖をじっと見つめる。 「その杖は?」 「これは昔、貰ったものなんだけど、やたら性能の良い杖で、どうもデータを改造されてるみたいなんだよね。本当はルール違反なんだけど、運営にはバレてないから使ってて。でも、データがおかしくなってるのか、たまにゲームがバグるの。もしかしたら、君もこの杖のせいで、何かしらのバグが起こって、自分がAIだと認識できるようになっちゃったのかもね」
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