森の中から

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古い話だ。 なんといっても自分が高校生の頃の話なのだから。 何十年も前なのに、思い出す友人の顔も声も話し方もよく覚えている。 教師達に名前から簡単なあだ名をつけて、噂話で部活のほとんどを費やしていたように思う。友人達と話すために違う部まで行ってたこともあった。 数学教師の○○センはヘビースモーカーでそのせいか、生徒が廊下でポロッとたばこを落としたときに、気ぃつけろやとにやっと笑って拾ってあげただの、生物のあの先生はアフリカツメガエルを偏愛していて生物部の生徒はアフリカツメガエルの研究をさせられているとか。 また学校の卒業生に漫画作家さんがいて、あの漫画のあの体育教師は絶対あいつがモデルだと言われてて、確認したら本人そのものだったのも覚えている。その教師にどんな気持ちか訊ねたら、学校生活からしかネタがないからこれからだな、などと誤魔化された。 地理担当でクラスの担任だった小柄なおじいちゃん先生は、クラス日誌に何かとコメントをくれて、その内容がことごとく素晴らしかった。生徒の何に対しての返事だったのかは忘れてしまったが「冬になる前にはにんじん5キロ、ジャガイモ10キロ、玉ねぎ10キロを毎年買いだめしておく」「昼休みに△△君が箒で遊んでいたのが楽しそうでしたね」などと毎回どこかずれていて、ほのぼのする返答をくれた。授業での名言「ドイツの主食は芋」は、イントネーションが独特で、私たちの間で物真似が流行った。
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