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♦︎♦︎ 冬の夜、仔猫と神さま
お空からふわふわ、まっしろな雪が舞い落ちる夜。
たくさんの人が行き交い、賑やかな声が絶えない、きらびやかな大通りからひとつ、外れた道。
人の代わりに「ひゅう」と冷たい夜風だけが体をかすめて通り過ぎる、しずかで暗い路地に、その子はいました。
身につけているのは、薄汚れ、明らかに大きさが合っていない服が一枚。
あちこちにゴミや石が落ちている路地を歩く素足は、同い年の子供と比べて固く、ボロボロになっており。
満足に食べ物のない生活の中で、体もとても小さいその子供は。
「ひと」でも「けもの」でもなく。
「じゅうじん」と呼ばれる、人の体に獣の特着を持って生まれる、とても少ない種の存在でした。
この町ではあまり見ない、太陽が沈んだ直後の空のような黒に近い焦茶色の髪は子供特有の柔らかさで、
所々ふわふわと癖がいており、毛先にいくに従い、あわく金色が混ざります。
また、やわらかな髪からぴょこっと覗く、小さなお耳は、猫のものによく似ていました。
透けるように白い肌に、宝石のような真紅の瞳がとても映えて。
小さなお口と手にするどい牙や爪はなく、
代わりに、大きすぎてワンピースのようになってしまっている服の裾から、先のほうが少し曲がった尻尾がはずかしそうにのぞいています。
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