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「マリちゃんお疲れ〜」
弁護士さんの事務所に着くと、にこりと笑顔を浮かべて迎えてくれたサークル仲間でこの事務所の事務を担当している萩原さん。
彼女のおかげで大変優秀な弁護士の先生を紹介してもらえて、あのクズ夫との離婚をするためのアレコレを手伝ってくれているので感謝しても仕切れない。
「ありがと〜! もー想像通りの展開で大変だったわぁ〜」
弁護士の先生は今後の対応のために席を外すと言っていたので、アタシは萩原さんと二人で談話スペースへと移動した。
さっきまでのことを彼女に話すとうげぇーとドン引きしていたが、萩原さんが浮かべる表情はどこか楽しそうだ。
「まぁ〜でもまだこれで完! じゃないからさ、最後まで私もセンセーも全力でマリちゃんのサポートさせてもらうね」
「頼もしいぃ〜〜! ハギちゃんほんっとーにありがとね〜!
ハギちゃんのおかげでめっちゃ救われたわ……」
「ぷっ……まだ早いって言ったじゃん!
緑の紙提出して、貰うもん全部受け取るまでは長いんだからね」
「一括でさっぱり終わらせられるか……?
あの人お金は持ってたからね〜女の子達とどれくらい使ったのかは知らないけど」
弁護士の先生を紹介してもらう前、アタシは彼女に色々と教えてもらっていた。
離婚に慰謝料、親権や財産分与などやることがたくさんある事。
お互いに話し合いで解決できるならそれに越したことはないけど、慰謝料の支払いが滞ったりばっくれられたりというのは少なくないらしい。
だからこそお金はかかるけれど、ちゃんと公的書類に残しておかなければならないということ。
アタシの場合は離婚に同意してくれるかも怪しかったから、自分を守るためにも最初から弁護士の先生にお任せした。
その分頭金やらの費用がかかったが、それについては両親が協力してくれたおかげでなんとかまかなう事が出来た。
まぁそれ以上の額をぶんどっってやって、両親へは返すつもりでいる。
たとえ親子だとしても、そういうところはきちんとけじめをつけなくちゃと思っているから。
他愛のない会話を続けていると、ふと萩原さんがスマホを取り出して得意げに笑う。
「よ〜し、マリちゃんの頑張りと今後のトラブル回避祈願にまたみんなでパーッと飲み会しちゃう?」
「お、マジマジ〜? めっちゃはしゃいで飲みたい気分〜!」
「よっしゃー! じゃぁいつものメンバ、声かけますか〜!」
スルスルと指先を動かしたあと、いつもの飲み会メンバーのグループチャットからピコンと通知が届く。
それを一旦スルーしてアタシは両親にメッセージを送って、快くOKを貰えたので親指を立てて萩原さんに答える。
またピコンとメッセージの通知が届いて、急ではあるけれど今日みんなで飲み会を開くことに決まった。
呼べばすぐに返事をくれるグループチャットのメンバーに感謝しながらスマホをポケットにしまった。
ある一人の人物からは返事が来ないことにはこの時気づかなかった。
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