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   すぐにしまったほうがいいかもしれないね。  そう言って、保健室の先生は最後にロリエの試供品をみんなに配った。二個いりの。  視聴覚教室から自分のクラスに戻るまでのあいだ、あたしは無言で歩きつづけた。ほかの女子もみんな、そうだった。  いろんなことを教えられて、わけがわからない。  女の子のからだのしくみ。  男の子のからだのしくみ。  もう少しからだが大きくなってくると、女の子には月に一度、生理というものがあること。あのティッシュのようなものは、そのために使うものだということ。  生理がきたら、赤ちゃんの産める準備ができているということ。からだが、大人になったということ。  あたしは小学四年生。  将来は好きなひとと結婚して、そのひとのために料理をつくったり、お掃除や洗濯をしたりして、楽しく暮らしたいと思っていた。赤ちゃんができたら、やさしいお母さんになりたいと思っていた。いまもそう思ってる。  でもちょっと。  頭のなかがこんがらがっている。ちょっと困ってる。  すんなり大人になれるものだと思っていたけれど、そうでもないみたいだ。  赤ちゃんも簡単にできるものだと思っていたけれど、そうでもないみたい。  そのうちあたしが大人になって、生理がはじまるのもショックだけれど。  それよりなにより一番ショックだったのは。  どうやってあたしが生まれたのか。本当のことがわかってしまったことだ。  おとうさんとおかあさんて、気持ち悪い。      
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