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 島田先生は教科書や資料を教卓にとんとんとうちつけていた。表情をすこしも変えないで。  みんなみんな、先生に注目していた。 「女子は今日は別の授業があるから。男子はいつもどおり着がえて体育館に集合ね」  島田先生はそれだけ伝えて教科書を脇にかかえる。  静まりかえるとひとの足音もしっかり聞こえるのだなあと思った。みんながじっと見守るなか、先生はすたすた歩いて教室を出て行った。  たまご色のとびらがぴしゃんと閉まる。  残ったのは閉じているとびらと、黒板横にはってある時間わり表。  教室が静かなのはほんのわずかだった。すぐにみんなおしゃべりをはじめたから。  奥村タカシの声はひときわ目立つ。  みんな話しているのに、やつの声だけがすぐにわかってしまうのが腹だたしい。 「なあんで女子だけなんだか」  奥村タカシの発言に反応してつい、またうしろを見てしまった。  やつはすでに立ちあがっていた。  机の横に体育着のはいったきんちゃく袋をかけているのはみんな一緒だ。奥村タカシのきんちゃく袋にはドナルドダックがプリントされていた。  長いひもを持ちつつ袋を肩にひっかけた奥村タカシが、ふっと顔をあげていく。  ぐうぜんに、目が合ってしまう。  うわ、と思って顔をしかめると、やつはあたしをにらんでさけんだ。 「こっち見んじゃねえよ、バーカ。ノッポ」
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