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「みんなそろったよねー?」
島田先生が視聴覚室じゅうを見わたした。白いとっくりのセーター。胸にある、ビールみたいな色をしたペンダントの石。
先生のあのペンダントが、あたしはわりと好きだ。
「整列しなくていいから、みんな適当にすわっていいよー。あ、でも、なるべく前のほうがいいかな? よく見えるし」
そう言われてとまどう。整列しなくていいことに慣れていないから。
全校集会のときも、体育のときも、体育館にいくときでさえもかならず、背の順に整列していたから。
とまどっているのはあたしだけじゃないみたいだ。みんな遠慮がちにスクリーンのおろされた黒板に近づいていく。ゆっくりと床におしりをつけて、膝をかかえていく。
あずき色の床はひんやりしていた。この教室はあついくらいなので気持ちがいい。
二人の女の先生が、スクリーンの前で小さく会話をかわしている。
島田先生が大きな茶封筒をもって投影装置のところまで歩いていく。
スクリーンの前に立っているのは、白衣の先生だけになった。
「はい、じゃあ皆さん。こっちを向いてください」
保健室の先生がにこやかに言う。
みんなが注目する。なにがはじまるんだろう、といった顔ばかり。
本当に、なにがはじまるんだろう。
保健室の先生がよいしょ、とかがんで床におかれたダンボールをひらく。なかのものをひとつ取り出して、あたしたちに見せてきた。
「みなさんの中で、これをどうやって使うか知っている人、いますか?」
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