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先生が取り出して見せてくれたのは、うす緑のつるつるした袋でおおわれたものだった。サッポロ一番の半分の大きさの。
そこにでっかく見える文字は「ロリエ」。
テレビのコマーシャルで流れているし、スーパーでも見たことがある。
そろりと一人の女子が手をあげる。それをきっかけに、もう二人の女子が手をあげた。
ロリエの袋には、よくよく見ると「試供品」とある。保健室の先生はそれをびりっとやぶいた。なかからポケットティッシュのようなものを出して見せる。
そこであたしは「ああ」と思った。
知ってる。見たことがある。
最近、おかあさんのハンドバッグのポーチに、あれと同じようなものが入っているのを見た。でも。
使い方なんて知らない。
手をあげている三人の女子をぼんやり眺めていると、保健室の先生に名を呼ばれた。
「小笠原さん?」
「はい?」
保健室の先生はティッシュのようなものを手にしたままで、こんなことを聞いてきた。先生のくすり指には銀色の指輪。
「小笠原さんはもしかして、あの……まだ、知らない?」
「え?」
いつのまにか、女子みんなの顔があたしにむけられていた。
たまたまあたしの横に座っているポニーテールのユウカちゃんも。
「……知りません」
答えると、保健室の先生は気まずそうな顔でうなずいた。
「そう。ごめんね」
はあ。とあいまいに返事をしてから思った。
どうしてあたしが指名されたのだろう。
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