Side B

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でも、目の前に顔がある気配はするのに、一向に唇に触れるような感触はない。 それでも、目をつぶって待っていたが、目の前の顔の気配がなくなった。 目を静かに開けると、ナオ君はうつむいていた。 「ごめん。なんか今日ちょっと……」 続きの言葉を待ったが、ナオ君は何も言わずに立ち上がった。 「そろそろ戻ろうか」 「ねぇ、昼間梨沙と何かあったの?」 思い当たることと言ったら、これしかない。 「えっ?何もないよ」 ナオ君は明らかに動揺している。 でもそれ以上聞かなかった。しつこい女に思われるのは嫌だから。 私もベンチから立ち上がる。 梨沙が何かするなんて考えられない…… 見た目で誤解されやすけど、ただすごい人見知りで、団体行動が苦手で、本を読むのが好きで、静かで純粋で穢れを知らない、守ってあげたくなるような子。 梨沙のこと、信じていいよね? 私は何も言わず、ナオ君の後ろを歩いた。 無意識に握った手に力が入る。私は奥歯を噛みしめた。
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