Side A

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隣を歩く水上さんを見ると、美味しそうにアイスを食べている。汗だくでアイスをなめる水上さんが妙に色っぽく見えて、ひとり動揺する。 ――今さら動揺なんて 俺は、つい最近まで水上さんのことが好きだった。 水上さんとは、4か月前、新入生オリエンテーションで同じグループになったのをきっかけに話すようになった。 初めは、落ち着いていて同い年とは思えない「キレイなお姉さん」という印象だった。 いつも静かで、少し近寄りがたい感じがあったが、思いきって話しかけてみたら、意外と気さくに話をしてくれた。彼女は、大勢で話すのが苦手だと言った。 そして、次第に打ち解けて話せるようになり、時折見せる笑顔がとても可愛くて、俺はどんどん惹かれていった。 けれど……水上さんに彼氏がいることを知った。 社会人の年上の彼氏らしい。話を聞いただけだが、水上さんにお似合いだと素直に思った。俺にはとうてい太刀打ちできない。っていうか、そもそも人様のものを奪おうなんて気は俺にはない。 気持ちを伝えることもなく、俺の片想いはあっけなく終わった。
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