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「……はーい。それじゃあ後でね」
電話を切った水上さんが、
「ナオ君によろしく、だって」
と、つぶやくように言った。奈津美は俺の事をナオ君と呼ぶ。
「奈津美、私たちのこと心配してたのかな?」
冗談ぽく言われたけど、俺は笑えなかった。
ふと、水上さんのスマホに目がいく。
あれ?このケース……
俺の視線に気づいた水上さんが、紫色のケースを見せる。
「これ、奈津美と色違いなんだよ」
見たことのある花柄。奈津美のはオレンジ色だった。
「そうなんだ……」
水上さんのことがよく分からなくなった。
頭がキーンとする。急に汗が冷たく感じた。
それからコテージに着くまで、俺たちは何も話さなかった。
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