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ブブッと通知を告げる振動がして、スマホを見た。画面には『着いた』と短いメッセージ。
ホームを見ると、電車が到着するところだった。
あの電車に、さきが乗っている。
先ほどから感じているのよりも、ひときわ大きな心臓の音。
ついに、と目を凝らして、続々と降りてくる人をジッと見つめ、視線で人込みをかき分ける。
(黒いシャツ……と、水色のスキニー……!)
それらしい服装を見つけ、伺うように視線を向ける。彼女は耳からイヤホンを外し、ケースに収めながら歩いている。
艶やかな黒い髪は、肩を超える長さ。暑苦しくなく、片方に流している。まだ顔は見えないけれど、その人も少し、こちらを伺うように視線がかち合った。
彼女がスマホを確認する。おそらく、メッセージを確認して、もう一度こちらを見た。
改札を通って、わたしの方へ歩いてくる。
足が長い、髪が綺麗、黒いシャツは今風に鎖骨が見えていて、なんてことないのにオシャレに見える――けれど、けれど、それよりも。
「こんにちは。あき……であってる?」
「さき……って……」
呆然と、目の前に立つ彼女を見る。
「紫苑さん……?」
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