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「いらっしゃい。あら、学生さん?」
「えっと」
「高校生です」
「あらそう。あんまり煙くない方がいいね」
カウンターの中の女性に話しかけられ言い澱んだわたしを横目に、紫苑がスマートにやりとりをする。店員さんは「一番入り口に近い席どうぞ」と入ってすぐの席を指さした。
テーブルの濃く深い茶色の色は、きちんと磨かれてツヤツヤとしている。丸い背もたれの椅子を引いて、帽子を外して腰掛けた。
すぐに持ってきてくれたお冷やとお手拭きで、喉を潤し手を拭く。
「メニューこれね。あと、あっちのおじさんタバコ吸ってるから煙かったらそこの窓開けていいよ」
「ありがとうございます」
「決まったら呼んでね」
店員さんがカウンターに戻ると、〝あっちのおじさん〟と笑いながら何か話している。どうやら常連さんらしかった。
「見て、サンドイッチ美味しそうよ」
ファイルに入れられたメニューを見て、紫苑が嬉しそうに言う。小さめに切り分けられたシンプルなサンドイッチが写っていた。確かに、美味しそうだ。
「お昼は食べた?」
「食べてない。……一緒に食べると思ってたから」
そういうと、紫苑はやや表情を緩めて「じゃあ、サンドイッチも食べましょう」とメニューをドリンクのページにして、わたしに見せてくれた。
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