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「……ブレンドと、タマゴサンドにしようかな」
「いいわね。私は……せっかくだからハムサンドにしようかしら。一つ交換しない?」
「うん、そうしよう」
何か話題があると少し会話が進む。
紫苑とは話したことはないけれど、学校ではもう少し、人を寄せ付けない雰囲気だった。
話すごとに、メッセージの印象と目の前の彼女が繋がる。落ち着いていて、穏やかに見える。
先ほどの店員さんを呼んで注文を済ませると、紫苑はこちらを真っ直ぐに見た。
「あき、と呼んでいてもいい?」
「あ、うん。わたしもさきって呼んだ方がいい?」
「そうね。……ねえ、あき」
「なに?」
「私の前で、無理に話さなくていいわ。メッセージと同じで大丈夫」
ポカン、とした顔をしたと思う。わたしはしばらく言葉を発せずにいた。頭は冷静なようで冷静ではなく、焦りのような、恥じらいのような、心臓がざわざわとする感覚がする。
ああ、彼女が居心地悪くしていたのではない。わたしが。わたしが、悪くしていたのだ。
「……ごめん、そうだよね」
「大丈夫よ。学校スイッチみたいなのが入ったのよね、多分」
「そんな感じです……」
恥ずかしくて赤くなる顔を覆った。何やら、わたしが気付くよりも先に察してくれていたらしい。
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