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熱くなったままの顔を手でパタパタと仰いでいると、店員さんが注文を運んできてくれた。コーヒーとパンの香ばしい香りに包まれる。
柔らかな湯気が立ち上るコーヒー。カップは真っ白で美しい。六等分に切られたサンドイッチは、表面がカリッと色づいていてとても美味しそうだ。
「これで全部ね。ランチはコーヒーおかわりできるから、必要だったら言ってね」
「ありがとうございます」
紫苑――さきはお手拭きで手を拭いて、口元を和らげていた。
「いただきます」
どちらともなく、目を合わせて言う。タマゴサンドを一口噛むと、サクッとトーストの心地いい音が鳴った。真っ先に来るのは、マヨネーズで味付けられた卵のシンプルな味。その後から、ほのかにケチャップの酸味がする。
「美味しい……」
向かいでさきの唇から、小さく声が漏れる。ふとそちらを見ると、彼女は目を細め、幸せそうにサンドイッチを食べている。
「……さきって、美味しそうに食べるね」
「そう? 初めて言われたわ」
気にした様子もなく、さきは一つ目のサンドイッチをぱくりと平らげていた。
「あき、一つ交換しましょ。ハムサンド美味しいわよ」
「あ、うん。タマゴサンドも凄く美味しいよ」
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