「あき」と「さき」

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 すっかり暑く、半そでの制服で涼しさをまったく感じなくなった。  期末テストが終わり、夏休みはもうすぐそこまで来ている。  さきとのやり取りは相変わらず続いていて、梅雨が明けてから、紫陽花がきれいな家の庭には、向日葵が咲き始めたそうだ。  きっと上品でまめな、お花が好きな奥様がお手入れをしているのだろうな、なんて考えながら、下校道を自転車で駆ける。  高校生がテストが終わって気が抜けるこの時期は、小学校も休み前で短縮授業になる。  妹はしっかりしているし、鍵っこ期間も長いのでそれほど心配しなくても良いと思うけど、家にいる時間がいつもより長いとなると、やっぱりちょっと気になるものだ。  信号のそばの日陰で汗をぬぐい、スカートをパタパタとあおぐ。  中に体操服の半ズボンを履いているとはいえ、良くないことはわかっている。でも、とにかくもう、暑いのだ。  なんで制服のスカートってこんなに厚手なんだろう、と中学生の頃からずっと思っている。  ピロン、とスマホの通知音が鳴る。  「さき」と表示された通知を見て、画面のロックを解除すると、学校を出る前に送った『もうすぐ夏休みだね』というメッセージへの返信が来ていた。
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