「あき」と「さき」

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 最初から、わたし達は添い寝フレンドを探して、巡り合ったはずだ。  こうやって提案してくれている以上、さきは早く直接会って、添い寝フレンドとしての一歩を踏み出したいに決まっている。  家の前に自転車を置き、またスマホを手にした。  わたしが送った『もうすぐ夏休みだね』のメッセージの横には既読マークがついている。  さきの方にもそうしてマークがついているに違いない。  思えば、彼女から返事を急かされたことはなかった。未読だろうが、既読だろうが、単に気にしない人なのか、待つのが得意な人なのかはわからないけれど、さきはいつでも無理のないペースで居させてくれる人だ。  そのさきからの、明確に求められた意思表示だ。  よし、とスマホの画面をフリックする。 『会ってみる』  思い切って送信すると、わりとすぐに既読になった。 『了解』  そんなそっけない返事も、最初から変わらない。  さきはきっとイメージ通りの人なんだろうなあ、と思いながら、少しだけ笑った。
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