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待ち合わせ場所は、五つ先の駅の改札前。十三時集合。
電車の中で自分の背格好を伝えるメッセージを送ったけれど、まださきからの既読マークはつかない。
余裕を持って行動しすぎたせいで、わたしは三十分前には駅についていた。
今日会うのに選んだ花咲通りという駅は、ショッピングができる施設がいくつもある、端的に言えば都会だ。電車の乗り降り一つにしても、とにかく人が多い。何をするにも困らない場所だった。
ピッとカードをかざして改札を出る。広告が流れる柱の前で、行きかう人を見ていた。
駅構内は陽が当たっていなくても蒸し暑く、汗がダラダラと流れてくる。それをハンカチで抑えながら、何度も電車から溢れるように出てくる人の流れを見送った。
集合十分前、わたしは『着いたよ』とメッセージを送った。
少しして、既読マークがつく。そして、すぐにメッセージが送られてきて、一つ、吹き出しが増えた。
『もう少ししたら着く。服装は、黒い半そでのシャツと、水色のジーパン』
それを見て顔を上げる。
電車がホームに着いて、人がまた流れてくる。
(黒いブラウス……と、スカート。黒だけどTシャツ……)
わたしも人のことは言えないけれど、なかなかありふれた服装を選んでくれたな……と思いながら、間違い探しのように人の群れをじっと見つめていた。
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