記憶喪失

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「───さま……瑠斗(るいと)様!」 「………ん、」 「良かった………あの時はどうなることかと」 僕は気がついたら白いベッドの上で寝ていた。 心配そうにこちらを見る男の人がいた。 「えーと………誰だっけ?」 「…………え?」 「………ごめんね。今どこなのか、目の前にいるのが誰なのか……僕自身もわからないんだ」 そう。何故か他人事のように僕は話す。 心にぽっかりと穴が空いた気分だ。 きっといつも僕のそばにいてくれた人なのだろう。酷く驚いたあと悲しそうな顔で笑った。 「今日はお休みください。明日また説明に来ますから」 「うん……」 ───それはある初夏の日の出来事だった。
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