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そして一通り診断をすませ、明日退院することになった。
まだ体力も戻っていないし、不安な気持ちでいっぱいだ。
帰りも夜弥にお姫様抱っこされ、病室に戻ると、見知らぬ人が窓の外を眺めていた。
扉が開く音が聞こえたのか、こちらを振り返り──
「良かった!愛しのマイ瑠斗!」
ダッシュでこちらに駆け寄ってくる人を夜弥がすかさず躱し、その人はドアにぶつかる寸前で止まった。
「誰かと思えば準夜さんでしたか」
あ!さっき説明された理事長か。
ということは今の親はこの人ということか。
「もう、記憶無くしちゃったとか言われて急いで仕事片付けてきたんだよ?」
「瑠斗様を寝かせるのでどいてください」
「もう〜辛辣だなぁ」
僕をベッドに下ろしてなお、2人の会話は続く。
「全く……今は新入生歓迎会やあの事の処理について忙しいのではなかったのですか?」
「あの事件の容疑者は2週間の謹慎で、風紀員の監視下にあるから心配はいらないよ。
あ、それと……新入生歓迎会は中止になったよ。こんな状況じゃ無理だもん。(๑>•̀๑)テヘペロ」
「………そうですか」
夜弥は嫌という顔を隠しもせず、肯定した。
ふと、気になる単語があったので2人に聞いてみた。
「あの……」
「ん?なんだい、愛しの瑠斗」
「あの事件って?僕に関わりのあることなのでしょう?」
「う、そうだよ」
「準夜さん、瑠斗様には──」
「本人は知りたがってるんだし、どうせ学園中の噂になってる。いま話しといて損は無い」
「っ、わかりました。準夜さんが話してくださいね」
「はいはい、っと。うーんと今月にね、転入生がやって来て───」
それから、準夜さんの話は続いた。
5月の初旬に転入生がやってきた。
その転入生は月城家の跡取り息子で、とてもわがままな性格のようだ。
つまり血は繋がっていないが僕の弟ということになる。
頭にはもじゃもじゃの鬘を付け、瓶底メガネをつけているようだ。
以降は毬藻と呼ぶことにしよう。
その毬藻は次々と生徒会のみんなを虜にして、やりたい放題しているそうだ。
唯一書記の人だけが虜にならず、仕事をしていたがぶっ倒れて、俺の隣の病室で寝ているのだとか。
今は6月が始まってそう日が経っていないが、約1ヶ月で学園はめちゃくちゃになったそうだ。
生徒会が機能しなくなり、そのツケが風紀員に回ってきた。
僕の学生証に書いてあったが、僕は風紀員の補佐をしていたようで僕自身も忙しくしていたようだ。
そんなある日、全校集会が行われた。
風紀委員長は生徒会のリコールをする権限をもっており、生徒の前でリコールを宣言した。
だが、毬藻が暴れ、非力な僕は壇上から突き落とされた。
幸い、身体は打撲程度で済んだが意識が戻らずそのまま病院に運ばれ、今の状態になっているそうだ。
さらに風紀では忙しくしていて食事をまともにとっていなかったのも重なり、この原因不明の病気を患った。
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