人魚?

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「引き取るのはいいとして、どうやってウチまでくる気なんですか?」  人魚ということもあり、下半身は魚(多分サメ)なので歩くことはできなそうだし 「魚野さんがおぶっていくとか?」 「よろしく、カイト」  ちょっと待て、そんな上半身ほぼ裸の食べられかけ少女なんかおぶったら捕まりますよ? おまわりさん的なやつに。ということで 「却下です」 「なんで」  おっと、そんな顔をしないでくださいよ 流石に捕まってしまうのはごめんです 「その、格好が」 「ああ、なるほどな。 だったらちょっとまってな」  おやっさんはそう言って店のさらに奥、居住している方へと入っていった。  初2人きり!何話せばいいんだろう? 「ええっと、リウムは人魚でいいんだよな?」  シンクにすっぽりと収まっているリウムに尋ねる。ってかよく見るとすごい格好だな、貝殻ビキニの上半身にサメに喰われてる下半身って 「うん、そだよ」  あっそうなんだあー、やっぱり。とはならんよなあ 「じゃあその下半身って?」 「え、初対面の女の子に下半身の事聞くってカイトって変態?」  おうっと辛辣ー、、、、  って俺なんてこと聞いてんだ!確かに初対面の女に下半身がどうとかってのは客観的に見てヤバイ!  でもやっぱり気になるよな、どうなってんだあれ、 「いや、変な意味じゃなくてな。そのサメ?みたいなのは何かなーって、」 「何って聞かれても、、、足?」  ああー、なるほど、足ね足。テクテクあるく いや歩けないよな?歩けるのか?  ってかサメみたいなので伝わるのか   「リウムってさ、歩けるの?」 「え、ムリだよ」  ですよねー 「じゃあ陸にあげられるとまずいんじゃ、今も水浴びてるみたいだし」  答えによっては大きな水槽が必要になる可能性が出てくるぞ 「ううん、意外と大丈夫。ハネれば結構いけるからね。水もないと死ぬって訳でもないよ」  ほっ、水槽は買わなくても大丈夫そうです 「じゃあうちまでハネてくる?」 「肌が傷つくから、できれば嫌かな」  良かった、断ってくれた。提案した直後に彼女が道でハネてる姿を想像したが、それはそれでお巡りさん案件になりそうだし。  そんなこんなでおやっさんが戻ってきた。  手に持ってるのは、、服、かな? 「お待たせ、かみさんの服持ってきたぞ」  服装への配慮感謝です。ちょっとヨレてるけど、ひとまずリウムにきてもらいましょう。でもそれだけじゃ 「あと、今日はもう店閉めるから、トラックで家まで送ってやるよ」  ナイスおやっさん。とりあえず家までおぶっていかなくてすみそうです。  って何で俺が感謝してんだ?される側な気がするんだけど、、  そのまま俺とリウムは軽トラへと乗り込んだ。リウムは荷台で小さなタライに入った水を浴びている。あれっ、荷台に乗るのって法律的にOKだったっけ?まあ魚介類だし日本の法律の適応外かな? 「いやあ、助かったよ魚野さん。かみさんが帰ってくる前に引き取り手が見つからなかったらどうしようかと」 「奥さんどっか行ってるの?」 「日帰りのバス旅行にね」 「おやっさんは置いてかれた訳だ」 「ちがわい!」  いい歳したおっさんがプイッとしている。一体誰得なんだ? 「そういえば、警察には届けたのかい?」 「ああ、源さんとこには伝えたが、」  源さんというのは地元の交番に常勤している警察の事だ。かなり大雑把だが人柄がよく、商店街の人々からも慕われている。 「それでなんだって?」 「てめえんとこの隠し子なんかに興味ないって、」  あいっ変わらず話聞かねえなあの人、 「なるほどね、いつも通りで安心するよ」  普通、安心したらいけないんだろうけど  俺のアパートの前でトラックは止まる。 「じゃあ、悪いがよろしく頼むぜ」  おやっさんはバンッと背中を叩いてきた。 「いってえな、おやっさん」 「ははっ、困ったことがあれば頼れよ」  ええ、頼らせてもらいますとも。なんたってアンタの元に現れた人魚の世話ですもの 「ああ、よろしく頼むよ」  俺はリウムを背負いに荷台へ向かった。 「リウム、背負ってやるからこい。」  ビチっ  リウムは下半身で荷台をはたき、飛びかかってきた。え、怖っ。 「うおっ」  あ、やべ  避けちゃった  スザザァ  あっ痛そー 「ゴメン、大丈夫?」  リウムはピクピクしている  いや本当ゴメン、なんかサメの方の存在感が凄くて、 「なんでよけんのよー!」    リウムはビチビチ跳ねている。いや、すごい絵面だ、  って、コンクリにヒビ入れてません?  えっ、そんなパワーあんの? 「ごめんって、思ったより迫力あってさ」 「痛いー痛いーもう動けないー」  おう、元気に跳ねていらっしゃるではないですか。とは言え悪いのは俺だろうし。 「ほら、おぶるから。許してくれ、な、」 「今度から気をつけてね!」  リウムの膨れ顔は萎んでいく。フグみたいだな。まあ機嫌は直してくれたみたいだ。  リウムが背中に乗ってくる。  ズンっ  重っ、絶対これサメの重さだよ。明らかに1人の少女の重さじゃないよ。だが流石に声には出せない。少女に向かって重たいとは言えない  俺は笑う膝を無理やり動かしながらアパートの自室へと向かった。 「いけいけカイト!」  楽しそうな人魚を背に乗せて。手を振るおやっさんにはなんのリアクションも取れぬまま。  
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