きみの心に寄り添いたい

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きみの心に寄り添いたい

あれから数日が経過して、いつしか中学生の兄さんも一緒に片付けをしてくれたりするようになっていた。 基本的に無口なタイプだから、俺が話しかけると相槌を打ったり、二言三言返してくれるようになった。 そんな日々が過ぎていたある日、兄さんは学校の制服を着て外出した。 田中さんの話では、兄さんのお母さんの14回目の命日なんだそうだ。 田中さんは心配そうな顔で、兄さんを母親の実家へ送り届けた。 俺は心配で、田中さんに 『何かあったら教えて下さい』 とだけメールを入れた。 するとしばらくしてから 『プライベートのメールまで知ってるんですね』 と、半ば諦めた感じでメールが返ってきた。 メールのやり取りをして1時間が経過した頃、田中さんが返ってきた。 何か言いたげな顔をしていたけど 「もう…ここまで知っているなら…疑う余地はありませんね」 と言うと、ダイニングテーブルに向かい合って座り 「実は去年、翔さんの母親の13回忌がありまして…。社長は翔さんの母親の親族から恨まれておりますので、葬儀に参列をさせてもらえなかったんです」 とぽつりと呟いた。 「確か…お墓参りも、兄さんしかダメなんですよね。本家の中にお墓があって…」 思い出したように呟くと 「そこまでご存知なのですか?」 と田中さんは驚くと 「えぇ…。一緒に一度だけ、お墓参りに伺わせて頂きました」 俺の言葉に、田中さんが言葉を失う。 そして小さく溜め息を吐くと 「実は13回忌法要の時、翔さんは翔さんの母親の親族から心無い言葉を浴びせられたようでして…、かなり落ち込んで帰宅なされたんです。今年もそうなるのではないかと心配で…」 そう呟いた。 「何を言われたのか?どんな扱いを受けたのか?は、全く話して下さらないんです。ただ、あれ以来、あまり笑わなくなってしまわれまして…」 と話す田中さんの言葉に、今、俺がこの世界に飛ばされた意味を感じた。 「あの…。それ、俺が兄さんに聞いても良いですか?」 そう言うと、田中さんは小さく微笑んで 「私に許可を取る必要など無いですよ」 って答える。 「俺、此処に来る前、兄さんの写真が小学校高学年から中学3年間だけ笑顔の写真が極端に少なくて心配だったんです。そしたら此処に飛ばされて…。俺、少しでも兄さんの気持ちに寄り添いたいんです!」 田中さんにそう叫ぶと、田中さんは俺の知っている田中さんの笑顔を浮かべて 「翔さんは未来、翔さんを心から大切にして下さるあなたに出会うんですね」 って呟いた。 「それは…田中さんもですよ」 俺は微笑んで 「だから、田中さんも待ってて下さい。田中さんには、めっちゃくちゃ美人で優しくて性格が良い恋人が出来ますから!」 そう付け加えた。 すると田中さんは悲しそうな笑顔を浮かべて 「私には…それに応えるだけの資格はありませんよ」 って呟いた。
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