きみの心に寄り添いたい

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俺は頬を膨らませて 「資格ってなんですか?お互いに好きで、惹かれ合っているなら良いじゃないですか!大体、いつだって俺の背中を押してくれてたのは田中さんなんですからね!」 そう言うと、田中さんは驚いた顔をして俺を見て 「私が…葵様を?」 って、不思議そうな顔をしている。 「田中さん。あなたが兄さんの為に、その手を汚して来たのは知っています。それでも俺は…、あなたが未来で俺に見せてくれている幸せな笑顔が大好きです。だからどうか、自分を諦めないで下さい」 そう言って、田中さんの手に触れた。 「葵様…。私は初対面の時、あなたに失礼な事をしたのに…」 戸惑う顔をする田中さんに、俺は笑顔を浮かべて 「あぁ…。あれは兄さんが心配だったからやった事でしょう?それに、未遂ですし」 って答える。 「どうしてあなたは…そんなに強くて優しいのですか?」 不思議そうに聞かれて 「ん〜。それは、未来の田中さんや、未来、田中さんの恋人になる人からそうされてるからだよ」 と答えた。 田中さんは何か言いたそうに口を開いてから、瞳を翳らせて俯いてしまう。 (蒼ちゃんも一緒に此処にタイムスリップしてたら、絶対、今の田中さんを抱き締めちゃうだろうに…) そう思って見ていた。 まだ24歳の田中さんは、不安定な心を必死で隠して蓋をしていた。 心を凍らせなければ、非情にはなれない。 でも、この人の本来の気性は優しい人。 人の痛みを分かってしまう人。 だからこそ、徹底的に非情にならざるを得なかったんだろうと思った。 「あの…翔さんをお願い致します」 頭を下げる田中さんに、俺は苦笑いを返す。 「それは無理だよ。だって俺、いつかは未来に帰るんだから。むしろ、俺の方こそだよ。今まで兄さんを守ってくれてありがとう。これからもよろしくお願い致します」 そう言って頭を下げた。 その時だった。 腕を引き寄せられて、田中さんの腕に抱き締められた。 (え…?) フワリと香るコロンの香りに、蒼ちゃんの顔が過ぎる。 「この数日、ずっとあなたと翔さんを見て来ました。あなたの優しい笑顔に、翔さんが穏やかな表情になられているのを見て、嫉妬してしまったのです」 そう言われてしまった。 (おっと…この展開はまずい…) 「あ…あの…田中さん?」 慌ててその腕から逃れようとすると 「すみません。もう2度とこんな事をしませんので、あと少しだけ…このままでいさせて下さい」 と言われてしまった。
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