きみの心に寄り添いたい

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(蒼ちゃん、ごめんなさい) 心の中でそう呟きながら、俺は田中さんの背中を軽くポンポンっと叩く。 「あと2年です。あと2年待って下さい。そうしたら、あなたを誰よりも大切に愛してくれる人が現れますから」 蒼ちゃんを思い浮かべて呟く。 「それまで大変だと思いますけど…、兄さんをよろしくお願いしますね」 そう言うと、ゆっくりと解かれた腕から離れた。 「今、俺と何かあったら、2年後に後悔しちゃいますよ。それに俺は…、俺が愛してるのは秋月翔。ただ一人ですから」 真っ直ぐに田中さんを見つめて呟いた俺に、田中さんは小さく微笑むと 「分かりました。では、2年後。葵様に再び会えるんですね?」 と聞かれて 「俺とは…その後かな?でも田中さん、俺なんか目に入らないくらいに恋人の事が大好きになってますけどね」 って微笑んだ。 田中さんは俺の言葉に小さく微笑むと、腕時計を見て 「そろそろ迎えに行って来ます。突然、抱き締めてすみませんでした」 と言って微笑む田中さんに、俺は笑顔を浮かべて 「いってらっしゃい!兄さんと帰ってくるのを、此処で待っていますね」 と答えた。 玄関まで見送り、田中さんが出て行った後でその場にへたり込んだ。 (危なかった〜!) いくら過去の田中さんとは言え、蒼ちゃんを裏切る行為はしたくないからね。 はぁ〜、ドキドキしたよ。 俺は深呼吸をして、心を落ち着けると 「さぁ!掃除とご飯の用意をしますかね!」 誰もいない秋月の家で、俺はそう叫んで歩き出した。
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