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夕方になり、兄さんは田中さんの車で帰宅した。俺は塩を持って行き、身体に掛けて中へ招き入れた。
その時に見た兄さんの表情が暗いのが気になったけど、今はそっとしておこうと思って兄さんを一人にしておいた。
夕飯の支度を終えて、兄さんの部屋をノックしようとして手を停める。
兄さんが、部屋で声を殺して泣いているみたいだった。
いても立っても居られなくなって、俺がドアを開けて中に入ると、中学生の兄さんが驚いた顔をしてこちらを見た。
俺は思わず抱き締めて
「泣く時は、思い切り泣かないと心が死んじゃうんだよ!」
そう叫んでいた。
中学生の兄さんは、俯いたままポロポロと涙を流している。
どうしたら兄さんの心を救えるのだろうか?と考えた。
考えて考えて、俺は頬にキスをした。
驚いた顔をする中学生の兄さんに
「俺は…世界中の全ての人が敵になったとしても、翔の味方だから!」
そう叫ぶ。
中学生の兄さんは驚いた顔をくしゃくしゃにして泣き笑いすると
「嘘臭い」
って呟いた。
俺は両手で中学生の兄さんの頬を包むと
「無理して笑わなくて良い!辛いなら辛いって泣いて良いんだよ!翔はまだ子供なんだよ。そんな早く大人になる必要なんか無い!」
そう叫びながら、俺も何故か泣いていた。
「葵は何で泣いてるんだよ」
小さく笑って呟く中学生の兄さんに
「悲しかったら泣くよ!俺は…翔が大好きだから、翔がそんなに悲しんでたら俺だって悲しいんだよ!」
そう叫んだ。
すると中学生の兄さんは目を見開いて
「俺……生まれて良かったのかな?」
ぽつりと呟いた。
中学生の兄さんの言葉に、今度は俺が言葉を失う。
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