お別れの時

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「…い、あ……い」 大好きな声が俺を呼んでいる、 「葵!」 身体を抱き締められた感触に目を開けた。 「葵?」 心配そうに俺を抱き締める兄さんの顔がある。 「翔…?」 意識が混濁して呟くと、兄さんが 「葵?大丈夫か?頭をしこまた打ったみたいだけど…」 心配そうに顔を覗き込む兄さんの顔にホッとした。 「兄さん?」 「大丈夫か?頭、痛くないか?」 心配そうに言われて、思わず兄さんに抱き着く。 「葵?どうした?他にもどこか打ったか?」 ギュッと抱き着く俺に、兄さんがオロオロしている。 「兄さん…、愛してるよ」 思わずそう言うと、兄さんは真っ赤な顔して 「な…、どうした?本当に大丈夫か?」 って言ってる。 俺は逞しい兄さんの胸に顔を埋めると、兄さんの匂いにホッとして 「兄さん…ずっと一緒に居ようね」 そう囁いて、二十歳の兄さんの頬に触れた。 大人の顔をしている大好きな兄さん。 俺がそっと兄さんの唇に唇を重ねると、兄さんの腕が俺の身体を抱き締める。 「どうした?葵からなんて、珍しいな」 驚いた顔をした兄さんが、照れ臭そうに笑う。 (あれは…気を失った時に見た夢?) ぼんやりと考えていると、兄さんが「ん?」という顔をして俺のシャツを突然捲った。 「ぎゃ〜!何すんだよ!」 慌てて叫んだ俺に 「ごめん、葵。俺、跡着けた記憶無いんだけど…」 って、身体に残る情事の跡に触れて呟いた。 「え?」 驚いて身体を見ると、あちらこちらに跡が残っている。 「あれ?なんで背中?」 首を傾げる兄さんの顔を手で押さえると 「もう!良いから!」 そう叫んでシャツを下ろす。 (夢じゃ無かったんだ…) 「取り敢えず、首元が小さいシャツに着替えた方が良い」 って、何故か兄さんの方が真っ赤になって呟いた。 俺が小さく微笑むと、そっと頭を撫でられて 「頭は大丈夫か?」 って聞いて来る。 「うん、大丈夫。ありがとう」 そう言いながら再び抱き着くと 「葵!お前、急にどうしたんだよ」 と言って慌てている。
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