お別れの時

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「俺、そんな風に見えるか?」 って聞かれて、俺は首を横に振る。 「ねぇ…、信じて貰えないだろうけど…」 そう言って、体験した話を兄さんに話をした。この残された跡が…、夢じゃないって証明してくれている。 最初はポカンっとした顔で聞いていた兄さんが、段々と顔を曇らせた。 そして初めての夜の話しの途中で、言葉を遮るように唇を重ねると 「田中には後日、制裁を与えるとして…」 そう言って、残された跡に噛み付くように唇を這わせて上書きを始めた。 「例え過去の俺でも、俺の葵に手を出すなんて許せないな…」 と呟くと 「葵、俺は浮気を容認出来るほど、出来た男じゃないんだ」 ってにっこり微笑んだ。 「え!相手は兄さんなんだから、浮気じゃないよね?」 「今の俺以外の奴と寝たら、浮気だろう!」 そう言うと 「中学生の俺、マジムカつく!」 と呟いた兄さんに、俺は中学生の兄さんの言葉を思い出して吹き出した。 「葵、浮気しといて何を笑ってるんだよ!」 少しだけ怒った顔をする兄さんの頬に触れ 「だって、中学生の兄さんも、同じ事を言ってたんだよ。それに…兄さんの初めてを欲しかったんだ…ダメだった?」 と呟くと、兄さんは「負けました」という顔をして 「それを言われたら……何も言い返せなくなるだろう」 って言って、兄さんの頬に触れている手を掴んで手の平にキスを落とす。 「兄さん、俺は過去も現在も未来も……時を超えても兄さんを愛してるよ」 そう言って微笑んだ。 すると兄さんは、中学生の兄さんが初めてを終えた朝に見せてくれた、ふにゃりとした笑顔を浮かべた。 (あぁ…やっぱり大好きだな…) 付き合っていても、ギュッと胸が痛くなる。 「葵、俺も同じだよ。葵の過去も現在も未来も…全て愛してる」 抱き締められて、そう言うと唇を重ねる。 そして頬にキスをしながら 「では……リクエストにお応えして、葵を抱き潰させて頂こうかな?」 って兄さんは言うと、耳に唇を這わせながら 「遠慮なく抱かせてもらうから…覚悟しろよ」 と囁かれた。 その後は……「二度と今の兄さん以外には触れさせません」と誓わさせられ、中学生の兄さんの夜3回、朝2回が可愛いかったのだと思い知らされる事になった。
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