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最終話
翌朝、目を覚ますと残りの引越しの準備は終わっていた。
身体はダルいし、声はガサガサ。
「兄さん、おはよう」
重い身体を起こして下へ降りると
「おはよう」
と、爽やかな笑顔を浮かべる兄さん。
うわぁ~、肌が艶々!
今まで、かなりセーブなさっていたのね。
ご満悦な兄さんは、俺にコーヒーを差し出して微笑む。
昨日の精力大魔神とは思えない、爽やかな笑顔に苦笑いを浮かべる俺に
「随分とセクシーな声だな」
って、クスクスと笑う兄さんを睨む。
「引越ししたら、毎晩、葵が抱き潰せるかと思うと楽しみだよ」
って、爽やかな朝に似合う笑顔を浮かべているのに、発言がエロオヤジ。
「俺、兄さんは紳士だと思ってた!」
無駄とは知りながら反抗してみたけど
「葵も、今までで一番感じてたみたいだけど?」
と、それはそれは爽やかな笑顔で返された。
「知らなかった…。葵は俺が初めてだから遠慮してたけど、遠慮は必要無かったね」
にっこり微笑まれ、飲みかけのコーヒーを吹き出しそうになる。
「いや、遠慮して下さい」
そう呟いた俺に
「煽ったのは葵なのに?」
って、顔を覗き込まれた。
「もう二度としません」
マグカップをテーブルに叩き置き叫ぶと、兄さんはクスクス笑って頬にキスをした。
「愛してるよ、葵」
笑顔でこれを言われたら、全て許してしまいそうになる。
俺は穏やかに笑う兄さんの笑顔を見つめ、小さく微笑む。
あの日のような、悲しみに声を殺して泣く姿は見たくない。
いつだって、俺が笑顔にしてあげる。
そう心に誓って、兄さんの首に手を回してキスを交わす。
「俺も、兄さんを愛してるよ」
ふわりと笑う兄さんと、ずっとこの先の未来も歩いていけますように…と、願いを込めて。 ~完~
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