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幾つでも、やっぱり兄さんだ
「はぁ?未来から来た?」
信じてはもらえないだろうと思ってはいるが、一応、中学生の兄さんに打ち明けてみた。
すると兄さんは驚いた顔をして冒頭の一言を叫ぶと、少し考え込んで
「親父が再婚…。それであんたが俺の弟?」
そう言って再び黙り込む。
まぁ…刺激が強すぎるので、俺と兄さんが恋人っていうのは伏せといた。
「なぁ…あんた」
「葵」
「…葵」
俺の知ってる兄さんより少し声が高い、中学生の兄さんの声が可愛くて思わず抱き締めたくなる。
「何?」
笑顔で答えると
「お前、それが本当ならどうすんだ?」
って聞かれた。
「何が?」
「帰る家、無いだろう?」
そう言われてショックを受ける。
そうだ!帰る家が…無い。
一瞬落ち込んだが、待てよ…。
この時代の母さんに事情を話せば、しばらく置いてくれるかもしれない。
そう考えていると
「葵が嘘を言っているようにも思えないから、しばらくはこの客間を使え」
と言われて、今は俺の部屋になっている場所へ通された。
俺は見知らぬ家具が置かれた昔の自分の部屋を見て落ち込む。
「どうした?」
そんな俺の顔を見て、兄さんが心配そうに俺の顔を見た。
「いや。実は此処、未来では俺の部屋になるんだ。なんか、知らない家具だらけだと、本当に違う世界に来たんだなって思って」
笑顔を作ってそう言うと、中学生の兄さんが俺の頭に手をぽんっと乗せた。
それは…兄さんが俺を慰める時にしてくれる仕草。
中学生だとしても、兄さんは兄さんなんだな…。
「えへへへ」
嬉しくて微笑むと、中学生の兄さんは真っ赤な顔をして顔を背けてしまう。
「兄さん、ありがとう」
と呟くと
「その…兄さんっての、止めてくれないか?」
と、中学生の兄さんが呟いた。
「え?」
「今は俺、中学生な訳だし…」
と言われて、『確かに!』っと思った。
「分かった。じゃあ、翔君で良い?」
そう聞くと
「君は要らない」
とぶっきらぼうに言われて
「翔で良いから」
って言われたのだ。
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