きみの笑顔を守りたい

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「あ…、いや。信じてもらえないのは当然ですし、兄さんが子供の頃に誘拐されて田中さんが心配してるのも分かってるんで…」 そう言って、「しまった!」と口を押さえる。 すると田中さんは大きく溜め息を吐いて 「そこまでご存知なのでしたら、疑いようが無いですね」 って言って苦笑いした。 すると兄さんが驚いた顔で田中さんを見て 「お前…あんな事を気にしていたのか?」 そう呟いた。 まだ兄さんが小さな頃、誘拐されて殺されそうになったらしい。 それ以来、田中さんは兄さんの近辺に気を配るようになったのを聞いた事があった。 田中さんは悲しそうな笑顔を浮かべて 「私のミスで危ない目に遭わせたんです。一生忘れられませんよ」 と呟いた。 兄さんは何か言おうと口を開きかけて、きゅっと口を結んで黙り込んでしまう。 どうしたんだろう?って、俺が中学生の兄さんの顔を見つめていると 「それで…葵様、私に恋人と言うのは…」 と、めちゃくちゃ戸惑った顔で聞いて来た。 「あまりたくさん話しちゃうと、未来がつまらなくなるでしょう?でも、安心して。田中さんも兄さんも、未来はずっと笑ってます」 俺が笑顔で言うと、田中さんは俯いて 「そうですか…。私も翔さんも、笑っているのですか…」 そう言うと、小さく微笑んだ。 「それでは、葵様がいらっしゃる間は翔さんをお任せしてもよろしいですか?」 と言われ、俺は笑顔で頷く。 「うん!任せて!」 そう言うと、田中さんは汚した床の掃除を終わらせて帰宅した。
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