突然ですが、タイムスリップしました

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突然ですが、タイムスリップしました

俺の大学入学が決まり、兄さんと俺は自宅から出て同居する事になった。 それは母さんからの提案で、チビ達が2歳になってヤンチャ盛りになり、俺と兄さんのプライベートがほぼ皆無になったのを気にして父さんに助言してくれたのだ。 家事が得意な俺が一緒なら何も心配ないという理由で、俺と兄さんはこの春から前に俺達が住んでいたマンションで同棲する事になった。 それは引越しの準備をしていた時の事だった。 脚立に乗って兄さんのアルバムを屋根裏から取り出していた時、何気なく開いて驚いた。 幼い頃は可愛らしい笑顔を浮かべていた兄さんは、小学校高学年から中学時代までの写真に笑顔が極端に少ない。 どこか寂しげで、何処か悲しそうだった。 パラパラとページを捲り、高校時代になると蒼ちゃんと笑っている写真が増える。 なんとなくホッとしていると 「こら、葵。サボるな」 と、頭を軽くコツンと叩かれる。 「兄さん…」 と言い掛けて、思わず言葉を呑み込む。 『どうして中学時代は、笑顔の写真が無いの?』 聞いてみたかったけど、聞いたらいけないような気がして俯く。 俺の知っている兄さんは、優しくて大らかで頼もしい。 そんな兄さんの中学時代の写真に、なんで神様はもっと早くに出会わせてくれなかったんだろう?って思ってしまった。 もっと早くに出会っていたら、兄さんはこんな表情をしなくて済んだだろうに…。 そんな事を考えていると、兄さんは俺の手からアルバムを奪うと 「そんな表情されると、キスしたくなるんだけど?」 って悪戯っ子の表情で呟き、俺の頬にキスをした。 「何を見てそんな顔をしているのかは分からないけど、俺は今、幸せだよ」 そう言って兄さんが微笑む。 俺の大好きな優しくて温かい笑顔。 「兄さん…俺も…」 と呟いた瞬間、ぐらりと地面が揺れた。 「地震か?」 兄さんが呟いた声がして、俺の身体がバランスを崩す。 ぐらりと揺れた身体が倒れ 「葵!危ない!」 そう叫んだ兄さんの声が聞こえた。
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